インドの列車で死と隣り合わせに

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ネットで見つけたインドやバングラディッシュで列車の上に載ってる人たちの画像。
遠目でもなく止まっている時の画像でもない。
乗ってる人目線の画像だ。かなり早く怖そう。実際に事故も起こっている。
まずは画像をみて頂きたい。

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画像元には他にも写真がある。Harrowing Bangladesh Train Hopping Images (20 pics)
参照)http://izismile.com/2011/08/13/harrowing_bangladesh_train_hopping_images_20_pics.html#EjKqoeC2RL0gOJFC.99

この画像を見ていて数年前のことを思い出した。
私自身インドの列車に乗っていて「やばい!死ぬかもしれん!」と思ったことがある。

ことの起こりは急遽インド人のF氏にコルカタ行きを頼まれたことだ。
その時の状況を箇条書きにする。

・たまたまコルカタに向う旅行者と一緒。彼はブルース・リーに似ているからリーさん。
・一つ前のプリー発コルカタ行の列車がキャンセルになった。
・それもありチケット予約はできなかった。
・駅でジェネラル(3等)チケットを購入するしかない。
・個人的にテンションは下がりまくる。しゃーなしだ。
・大きな駅でスリーパー(2等)やエアコン車への変更を駅員さんに頼めばいいとF氏は強く要請。
・列車の出発は23時近く。

という状況でプリー駅でジェネラルの切符を購入する。この席は乗車率に関係なく人は乗ってくる。
夜行列車でも横になれない席だ。旅行者でも乗っているのは相当な猛者のみ。
ともかく席の確保ということで並み居るインド人たちと押し合いへし合いを経て何とか席ゲット。
一息つくも一晩この混雑している場にいたくはない。

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次の駅でリーさんに荷物を見てもらいながら駅員さんを探して長い駅をうろつく。
インドの列車は長い。
ジェネラル席からスリーパー席、最も高級なエアコン車まで歩きに歩いて交渉。
しかし、どの車両の駅員さんも取り付く島なしで断ってくる。
「あるはずないだろう!」といった雰囲気だ。

ここで!
列車が!!
動き出した!!!

ジェネラルの席まで戻る時間はない。
とりあえず近くのスリーパー席に飛び乗る。
空席がないかを見ながら戻る。
幸い誰もいない席もあるので旅行者と共に移動するかと考えながら戻る。

ここで一つ問題が発生する。
スリーパーの車両とジェネラルの車両は間に荷物車両があり移動はできない。
荷物車両には入れない。
つまりジェネラルの車両に戻るには一度外に出ないといけない。

幸いインドの列車のドアは手動式で自由に開け閉めできる。
たまたま野原の真ん中で列車が止まった。
これ幸いとスリーパー車両のドアを開け荷物車両を通り過ぎる。
スリーパー車両の外からリーさんに状況を説明していると、

ここでまた!
列車が!!
動き出した!!!

急いでスリーパー車両に戻り入ったドアに手をかけた。すると
普通に中からロックされていた。この時は困ったな、くらいの気持ちだった。
ドアを叩いて中にいるであろう人に開けてくれと訴える。しかし開かない。
ただ段々列車のスピードも上がってきている。
とりあえず走りながらドアを叩くのは難しい。
ステップの上に乗り手すりに掴まりまた止まるのを待つことにした。

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左の兄ちゃんが掴まっている手すりが命綱だった。

さて、上に張り付けた画像を思い出すか、再度見てもらいたい。あのスピードである。
しかも夜中。この時点で深夜1時過ぎ。

暗い!
早い!
怖い!

たまに木の枝が列車にあたり「ファサッ」とか音が鳴る。
眼下がさらに真っ暗な橋の上を列車が走る。
遠くで野良犬の遠吠えがする。

木の枝が自分に当たったら、とか
もし列車から落ちた時に橋の下に落ちたら、とか
列車から振り落とされて野良犬に囲まれたら、とか

ネガティブな考えが頭をよぎる。そして気づく。
え、もしかしたら命が危ないじゃないかと。
肉体的にも手すりに掴まる腕に力が入らなくなっていた。
その時の心境は「やべー!こりゃ、まじでやべー!」というもの。

恥も外聞もかなぐり捨て自分の出せる限りの声で叫ぶ。ヒンディでも、英語でも、日本語でも。
そして片手で思いっきりドアを叩く。
「バチャオー!(ヒンディで助けて)」「ドンドンドン!」
「ヘルプミー!」「ドンドンドン!」
「助けてくれー!」「ドンドンドン!」

生まれてこの方あれほど大きな声で「助けてくれー」と叫んだことはない。
片手だけで手すりに掴まっているのは不安でドアに頭突きもする。これは痛すぎてすぐやめる。
ともあれ、大声で叫びドアを叩くことを30分くらい続けた。もう声も枯れてきた。
でもこっちは必至だ。中のインド人は気持ちよく寝ているかもしれないがこっちは命の危機だ。
インド人よ、頼む、目覚めてくれ、祈りに祈り叫び叩いた。

そうした願いが通じたのか。
ドアの向こうでカチャカチャという音がしたと思ったらふいにドアが開いた。
眠そうなインド人が6,7人ほどこちらを宇宙人でもいるかのように見つめている。
どんな風に見られようが私にとっては命の恩人だ。
涙をながさんばかりの表情で「Thank you!」と言いながら皆に握手を求める。
しかし彼らは、握手とか良いから早くここを立ち去ってくれと言わんばかりだ。
この時の温度差と言えば人生史上初かもしれない。

確かに気持ちよく寝ていたら外から奇声をあげながらドアを叩かれ続ける。しかも深夜2時。
まさに叩き起こされ、ドアを開けてみたら変な坊主の外国人がいてやたら握手を求めてくる。
これは確かにあしらいたくもなる。

この後何とかジェネラル席に戻り、リーさんとおとなしくそこで朝を待った。
この事件を通して思ったこと。命の危険はどこに潜んでいるかわからないものだ。
皆さんもお気を付けあそばせ。
そしてこの事件は乗り合わせたインド人にとっても面倒くさい修羅場だったのだろう。

帰った後F氏にやつあたりしたのは言うまでもない。

大切な教訓:チケットは事前にゲットしよう!