スラムツアーinデリーに参加してみた

スラムツアーについて

日本人だけではいけない場所へ今回は、サンタナが主催しているスラムツアーに参加しました。サンタナと外部の旅行代理店(Street Tours India)が提携してプログラムを組んでおり、実際にスラム街の中を歩きながらガイドしてくれます。

ツアーで訪れるスラム街は、70000人以上が住むデリー最大規模のスラム街”ジャキーラ”(ちなみにジャキーラは現地の言葉で”親切でない”という意味だそう…)というところ。デリーから2,30分ほど高速道路で行き、高速を降りたすぐの場所に存在します。また、ここはもともと鉄道会社があったため、街の区間内には長い線路が残っています。このスラムで暮らす住民は、線路沿いや高速道路の下などにも家を建てて暮らしています。

スタッフのジョンさんが案内してくれます。

ジョンさんの案内のもと、サンタナで出会った宿泊者3人と一緒に参加してきました。

スラムの生活に触れる

スラム街らしき集落の光景は、インドを旅行していればリキシャや電車での移動でよく目に留まります。しかし、その中に足を踏み入れる経験は滅多にできないだろうと思い、今回ツアーに参加してみました。実際に、スラムの人々のリアルな生活に触れて、スラムに対する見方が大きく変わりました。スラムの人たちの生活を写真と共に振り返ってみます。

・暮らし

街を真っ二つにするように線路が敷かれている。

高速道路の下にも犇めき合うように多くの家が軒を連ねている。

日当たりが悪いので洗濯物も乾かない・・・。

商店街のような通り。食材や日用品など生活用品は一通り揃っている。

衣服や調理器具、電化製品などあらゆるモノが散乱状態。

70000人が生活するレンガ造りの家々が所狭しと建ち並んでいます。隣家同士びっしりと垣根なく並んでいるので、道が狭くて迷路を歩んでいる感覚です。

生活に関しては、ミニマーケットや衣服店、コンビニのような日用雑貨を売るお店もあるので、スラム圏内で必要最低限の生活を送ることができます。ですが、街中に散乱するゴミ、工場や電車・車による騒音、電気や水道が通っていない家も多く、生活環境は決して良くありません。

・働く

リサイクル工場。ジャキーラでは、街中に溢れるゴミを削減するため、リサイクル業が盛んに行われている。写真は古紙を溶解して再生紙の原料を取り出している様子。

料理など汎用性の高いボウル。手作りの工程が多い中で、1kgで200RS(だいたい300円ほど)の売上しか儲からないという。

こちらではスーツケースの取っ手を製造している。この他にも街の工場では扇風機の蓋、排水溝の網なども生産している。

みんな大好きチャパティの工場。

動物や魚を飼育して食肉販売する商売人たち。

街中には工場が多くあります。ほとんどはデリー市街地の企業から下請されて、細かな部品の製造・加工を担っています。しかし、そこで働く人たちの実態は大変シビアです…。

まず、給料は平均6000RS(9000円)/月ほど。食費でその約半分ほど削られるので、家賃、電気代、水道代など加算すれば手取りはほとんど残らなくなってしまいます。また、労働環境に関しては、基本的に窓がないため、狭くて暗い空間で密閉して作業を行っています。特に化学製品を取り扱う工場が多いため、製品から発生する発癌性物質を吸ってしまい病気に罹ってしまう労働者も多いとも聞きました。

・学ぶ

こちらが街で唯一の学校。ジョンさんは学校の先生も務めているという。

ボランティアの方から頂いた写真。このように建物の屋上で授業を行っている。

街には学校が1つあり、30人弱のクラスで5〜14歳まで幅広い年齢層の子供が通っています。授業は週5日であり、週3回を1枚目の写真が示すように建物の屋上で、週2回を街のコミュニティスペースで行っています。科目は英語算数に加えて、仕事や生き方に着いて考える授業も行っています。

しかし、屋上での授業は騒音や高温で、勉強に集中する環境が整っていません。また、それ以前にこの学校に通っていない子供たちがたくさんいると言います。学校に行かずに家のお仕事を手伝っている子供もいれば、学校の周りで遊んでいる子供たちもたくさんいます。

感想

スラムツアーを振り返って

今回はじめてスラム街と呼ばれる場所に行ったのですが、ツアー参加前後でスラムに対する印象が大きく変わりました。

参加前は、薄暗くて物乞いが多くて危険なイメージをスラムに対して持っていましたが、実際に行ってみたら、学び場・働き場もあって必要最低限生活していく上では特に困らない環境が整っていたことに驚きました。しかし、生活環境は決して良くない上に、ギリギリの収入で切り盛りしている人が多くいました。また、平日真っ昼間に子供たちが工場で働いている姿を見て、ジョンさんの教育に関する話を聞いて、その貧困が代々子供たちに連鎖している大きな課題があルことを知りました。

このような貧困の連鎖を断ち切るにはどうすればいいか?
個人での募金やODAなどが主体となったインフラ整備など大規模な投資なども大切ですが、ツアーを通して地に足の着いた支援が必要だと思いました。

必要なのは”機会”である。

必要な支援とは何か…?
それは、機会を提供することだと私は考えます。最後に示した”学校を建てたとしても必ずしもみんなが行くわけではない”という事実がまさにそれを示しています。つまり、子供たちは学校がなかったから勉強ができなかったのではなく、本質的に勉強する意義が見出していないということです。

”学ぶ”で、学校に行かずに家のお仕事を手伝っている子供がたくさんいると書きましたが、学校を卒業したとしてもそのままスラムで働く子供が多いともジョンさんは言っていました。彼らにとって、卒業した後の進路がスラムで働くこと以外になければ、わざわざ学校に行く必要はないのかもしれません。なので、学校に行かない子供たち自身が必ずしも悪いのではなく、むしろスラムの閉塞的な環境に原因があるのだろうと私は考えました。

前置きが長くなりましたが、機会を提供すること、それは”子供たちが外の世界を知って自身の選択肢を広げられるような体験ができること”だと私は思います。

私たちは当たり前のように毎日学校に通い勉強していましたが、それはきっとその先にある可能性や選択肢をたくさん知っていたからなのでしょう。小さい頃から遊びや旅行などでいろんな場所に行ったりテレビを観たり本を読んだり…知見を広げる機会に恵まれており、様々な可能性を自ずと知り得ていたのです。

彼らにも、そんな外界に触れる機会がもし存在すれば、将来に対して多様な可能性を感じて、勉強にも精が出るのではないでしょうか。こんな偉そうなことを申すのは大変僭越ですが、そんな子供たちが増えれば街の未来にも繋がるのではないかと考えます。

そのため、学校で先生も勤めるジョンさんが、通常の授業に加えて、将来の夢ややりたいことについて考える授業を展開していたり、図書館を建設している取り組みに対して、勝手ながら共感して感銘を受けました。ただ単に、物を作ったり、渡したりするだけではなく、同時にこんな取り組みも必要なのだと。

最後に

ツアー参加者の感想たち。一枚一枚にそれぞれが感じた想いや考えがぎっしりと書かれています。

一日スラムで過ごしただけでつい偉そうなことを言ってしまいましたが、それほど色々考えさせられるような経験でした。私自身、これまで貧困支援や被災支援のボランティアに何度か携わった経験があるのですが、今後もし自分が今後慈善活動に携わる機会があれば、”支援する相手が主体的に動けるにはどうしたらいいか”を考えた支援をすることを心掛けていきます。

ガイドしてくれたジョンさんと学校でボランティアしていたゆきちゃん、たくさんの有益な情報を提供してくれてありがとう!

また、ジョンさんの所属するStreet Tours Indiaでは、ツアーで得た収益の70%をスラム街に充てています。収益を基に、学校に通う子供たちが少しでも勉強に集中できるように屋上の教室に壁と屋根を建設する計画も行っています。Street Tours Indiaの詳しい活動については、こちらをご覧になってください。

チャパティを作る体験もできますよ〜

スラムの実態や貧困支援に関心のある方はもちろん、これからデリーに行かれる方もフライトまでの待機時間や観光プランとして是非参加してみてください!